食品廃棄ロス削減の取り組みは、企業のスタンダードな社会的責任という認識が定着しつつあり、ニュースで取り上げられることも増えています。特に飲食業界に属する企業は具体的な食品廃棄ロス対策をとることで、企業イメージ向上と経営的メリットも期待できます。この記事では食品廃棄ロス削減のために企業が取り組むべき課題を解説します。
食品廃棄ロスは毎年どれくらい出ているのか
食品廃棄ロスとは、まだ食べられるのに廃棄される食品により生じる損失のことです。特に廃棄ロスは、仕入れ過多が原因で商品の品質保持期間を超えてしまい、値引き・廃棄せざるを得ずに発生する損失を意味します。
世界の食料排気量は年間約13億トンといわれ、人間が消費するために生産された食料の約３分の1が廃棄されています。農林水産省が発表した日本における令和3年度の食品ロス量は523万トンで、この量は前年度に比べて1万トン増加しています。
年間523万トンの食品廃棄ロスは、国民1人あたりに換算するとお茶碗約１杯分（約113g）の食べ物に相当します。また、日本の食料自給率は40%に満たず、多くの食料を海外からの輸入に頼っています。わざわざ海外から輸入した食料を、消費せずに処分されている現状は、早急な改善が必要です。
食品廃棄で発生する損失は、食品そのものの費用だけではありません。輸送費、管理費、廃棄費用も「ムダ」として上乗せされます。また、食品管理を正しくおこなえていれば不要だった損失が発生するだけでなく、他の誰かのエネルギーとして活用できるはずだった機会も奪っています。
廃棄処分で発生する温室効果ガス排出増加による環境負荷の増加や、焼却や埋め立てなどの処理による環境汚染、食料資源の浪費、食べ物を捨てるという行為に対するネガティブなイメージなど、デメリットの枚挙にいとまがありません。これらの問題を解決していくには、企業単位で改善に取り組むことが重要です。
廃棄ロスを削減するポイント
食品の廃棄ロス削減のために企業に求められる課題は大きく分けて3つあります。一つ目は需要と供給のバランスを適切に把握することです。食品廃棄ロスの原因の多くは、需要と供給バランスが適切にとれていないことによります。
そのため、需要予測を正確におこなうとともに、需要に合わせた生産・販売が重要です。二つ目は消費者の意識を高めることです。企業は消費者に対して、食品ロスの現状や削減の取り組みについての情報提供をおこなうとともに、食品ロス削減への理解・協力してもらうための仕組みづくりが求められます。
三つめは賞味期限の延長や食品の有効活用を図ることです。賞味期限は食材の品質が保持される期間の目安ですが、必ずしも安全性を保証するものではありません。そのため賞味期限の延長や、食べられるけれど廃棄されてしまう食品を有効活用することで、廃棄ロス削減につながります。
廃棄ロス削減で企業のイメージアップ！
企業が具体的にとれる食品廃棄ロス削減の対策がいくつかあります。まず「需要予測の精度を向上させる」ことです。売上予測や需要動向の分析などによって、食品の需要予測精度を向上させ、廃棄ロスを減らします。AIやIoTなど最新技術を需要予測に採り入れることで、分析コストを下げたり、予測精度を高めたりといった効果も期待できます。
また「食品の有効活用」も有効です。賞味期限切れ間近の食品を加工食品や飼料などの用途で再利用します。またフードバンクなどの社会貢献活動への参加や、消費者に食べきれない食品を持ち帰れる容器を提供することで、廃棄ロス削減を図れます。
他にも食材の品質保持技術の開発や、冷凍・冷蔵などの保存技術の活用で賞味期限を延長することも廃棄ロス削減に役立ちます。特に食材の急速冷凍は既存技術のため、すぐに導入可能なことが魅力です。
急速冷凍技術は食材を迅速に冷却し、食材の味や栄養価を新鮮な状態のまま長持ちさせることに効果を発揮します。急速冷凍は氷結が均一におこなわれるので、食材の細胞構造が崩れにくく、酸化や品質低下を抑制し、在庫を効果的に回すことにつながります。
賞味期限を延ばせるので、季節の変動や需要予測が難しい時期でも、柔軟な在庫管理が可能になることもメリットです。顧客は地球環境への影響を考慮した企業活動に対して、好意的な態度をもつ傾向があります。
廃棄ロス削減の具体的な行動をとることは、企業の社会的責任を果たす一環としてイメージ向上にもつながるでしょう。
まとめ
食品の廃棄ロス削減のために企業が取り組むべき課題を解説しました。食品廃棄ロスによるデメリットは、経済損失だけでなく、環境負荷の増加や環境汚染、資源浪費などが挙げられます。
廃棄ロスを減らすため企業が取り組める具体的な対応策として、需要予測の精度向上、賞味期限を迎える食材の有効活用、顧客に対するフードロス削減の呼びかけの他に、賞味期限を延長させる保存技術の活用などがあります。
特に急速冷凍技術は食材の味や栄養価を維持しながら賞味期限を延ばせるため、導入後すぐに効果が期待できる課題解決策のひとつです。
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