
食品の鮮度を極力保ちつつ保存することは、加工・流通・飲食事業において非常に重要な課題です。近年は、短時間で凍結させる「急速冷凍」が注目を集めています。急速冷凍にはいくつか方法がありますが、そのなかでも「ブライン冷凍」は、冷却液を使って食品を効率よく凍結できます。
本記事では、ブライン冷凍の基本原理からメリット・デメリットまでくわしく解説します。ぜひ導入時の参考にしてみてください。
目次
ブライン冷凍とは?
ブライン冷凍とは、塩水やアルコールなどの不凍液を用いて食品を短時間で凍結させる方法です。液体は空気より熱伝導率が20倍大きいとされており、凍結スピードの速さが大きな魅力です。空気を利用するエアブラスト冷凍よりも、圧倒的な速さで食品を冷やすことができます。
時間をかけて凍結すると、細胞を破壊してうま味成分が流れ出してしまいます。しかし、ブライン冷凍は、食品内の水分が凍る0度からマイナス5度の温度帯で冷やすため、食品の品質を損ねることなく凍結が可能です。
ブライン冷凍機の仕組み
ブライン冷凍機は、ブライン液を冷媒として用いる冷凍機のことです。そもそも冷凍機とは、冷凍庫や冷房などに使われている温度を下げるための熱源設備を指します。冷凍機の中で循環している冷媒が蒸発器により蒸発する際、空気を冷やす構造となっています。
そして、蒸発器で気体となった冷媒は、圧縮機で圧を加えられると温度が上昇します。凝縮器で温度の上がった冷媒は熱を奪われて液体に戻り、蒸発器によって気体へと変化します。このように、液体から気体、気体から液体へと変わる「冷媒サイクル」によって冷気を作り出しています。
もともと冷凍用冷媒には化学製品であるフロンが広く使われていましたが、オゾン層を破壊する原因であることが判明してからは、フロン以外の冷媒を使用する動きが高まっています。とくに食品を扱う冷凍機は、自然冷媒であるアンモニアを用いられるようになりました。
しかし、アンモニアは強いにおいと毒性があるため、庫内への漏えいを防ぐために間接冷却式が推奨されています。間接冷却式とは、一時媒体としてアンモニアを使い、二次媒体として二酸化炭素やブライン液を用いる方法です。
つまり、ブライン冷凍機は、アンモニアで冷やされたブライン液によって冷気を作り出す冷凍機のことです。
冷媒として用いられるブライン液について
ブライン液を冷媒として用いる理由は、0度以下でも凍ることがなく、効率よく冷やすことができるからです。ブラインは、飽和食塩水もしくは高濃度の食塩水を意味しており、価格が安いため、昔から低温用の媒体液として用いられてきました。
また、塩化カルシウム水溶液も安価で手に入りやすいことから、広く使われています。しかし、濃度の高い食塩水や塩化カルシウム水溶液は、不凍性は優れている一方で、金属腐食性があるという弱点があります。そのため、現在は、熱伝導率が高く、金属や樹脂に反応しない有機系のメタノールやエタノールを主成分としたアルコール溶液が多く採用されています。
ブライン冷凍機のメリット
ブライン冷凍の最大のメリットは、凍結スピードの速さです。液体は空気に比べて熱伝導率が20倍大きいことから、非常にスピーディーに食品を凍結することができます。
一般的な緩慢凍結だと、氷の結晶が大きくなり、食品の細胞を破壊してしまいますが、急激に温度を下げることで細胞破壊を防止できます。そのため、食品の品質を損なうことなく凍結が可能です。ほかの冷凍方式だと時間がかかってしまうブリやカツオなどの厚みのある魚介や牛モモなどの畜産、傷みやすいカキなどの凍結に適しています。
また、冷凍用の袋に食材を入れ、パウチをして冷たい液体に漬けるだけなので、だれでも簡単に扱うことができる点も魅力のひとつです。霜が発生しないことから、霜取り運転が必要なく、スムーズに作業を進められます。
ブライン冷凍機のデメリット
ブライン冷凍は真空包装をしなければならないため、ケーキや和菓子といった型崩れしやすい食品には適していません。また、食品ごとに包装したり、凍結後にアルコールを拭き取ったりする必要があるため、手間とコストがかかる点もデメリットです。
さらに、ブライン液には、塩水やエタノール、塩化カルシウムなど、さまざまな種類があり、それぞれ温度が異なります。そのため、食品に合わせた調整が欠かせません。
冷凍機で用いられることの多い「エアブラスト冷凍」と比べると、流れ作業のラインが組みづらいことから、大量生産には向いていないでしょう。
ブライン冷凍とエアブラスト冷凍の違い
ブライン冷凍とエアブラスト冷凍は、どちらも急速冷凍方式としてさまざまな現場で導入されていますが、特徴や強みが異なります。ここでは、その違いを解説します。
冷凍品質は優劣がつけられない
どちらも氷結晶を小さく抑えられるため、解凍後の品質保持において大きな差はありません。エアブラスト冷凍は、送風によって凍結させるため、ブライン冷凍のほうが食品の乾燥を抑えられる点が異なります。
また、エアブラスト冷凍は、配置によっては商品の冷凍度合いにムラが生じる可能性があります。食品や運用目的に応じて、最適な方式を選ぶといいでしょう。
凍結スピードはブライン冷凍が有利
ブライン冷凍は、液体による高い熱伝導性を活かし、厚みのある食品でも素早く均一に凍結できます。とくに水産物や肉の大量処理に適しています。具体的には、厚さ30ミリの食品であれば、約20分で凍結が可能です。
コスト面・メンテナンスのしやすさはエアブラスト冷凍が有効
エアブラストは設置が比較的容易で、包装状態の食品や多品種少量生産にも対応可能です。形が崩れやすい菓子やパン、麺類なども凍結させることができます。初期コストやメンテナンスのしやすさを考慮すると、幅広い現場で使いやすい方式です。
ブライン冷凍の活用事例
ブライン凍結は、とくに水産業で強みを発揮します。具体的な事例を紹介します。
カツオ漁
遠洋漁業で漁獲したカツオは、鮮度保持が重要です。ブライン冷凍を用いることで漁獲直後に急速に凍結でき、長期間にわたって釣り上げたときの鮮度を保てます。生鮮品と変わらないくらいの鮮度を維持できるため、刺身やたたき用として高品質な状態で流通させることが可能になります。
サバやカンパチなどの水産加工場
ブライン冷凍は、凍結速度が速いため、厚みのある食品や傷みやすい食品に適しています。たとえば、サバは寄生虫や細菌が発生しやすく、鮮度を維持するのが難しいと言われています。
しかし、捕獲して船上でブライン冷凍させることで、刺身などの生鮮品を全国で提供することが可能です。とくに、金華山周辺海域で捕獲できるブランドサバ「金華サバ」は、決まった時期にした捕獲できず、流通が難しいとされていましたが、ブライン冷凍することで全国への出荷を実現しています。
また、ブライン冷凍は、カンパチやブリなどの水産加工場でも活躍しています。血抜き後の魚介をフィレなどに加工し、真空包装したあとにブライン冷凍しています。
さらに、近年では畜産品や冷凍惣菜分野でも導入が進みつつあり、大量処理が必要な現場で活用の幅が広がっています。
まとめ
冷凍技術の進歩によって食品の品質を長期間保てるようになり、作り立ての味やとれたての味を再現できるようになりました。急速冷凍にもさまざまな方法がありますが、なかでも凍結スピードの速い「ブライン冷凍」は、さまざまな現場で活躍しています。
とくに、冷却に時間がかかるとされる厚みのある食材や大きい食材に適しており、カツオやサバなどの水産加工現場で多く採用されています。その一方で、真空包装しなければならないため、形が崩れやすい食品には向いていません。
また、液体の取扱や衛生管理などに気を付けなければならないため、導入にあたってはメリット・デメリットを含めて慎重に検討しましょう。本記事が参考になれば幸いです。
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引用元:https://kogasun.com/3Dフリーザーは、世界初の特許技術による冷凍で食品の美味しさをキープしたまま保存できる点が食品業界で評価を得ています。
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