
急速冷凍機には、大きく分けて「エアブラスト冷凍」「ブライン冷凍」「液体窒素冷凍」「コンタクト冷凍」の4種類があります。そのなかでも、冷風を利用して食品を短時間で凍らせるエアブラスト冷凍は、汎用性の高さと導入のしやすさから幅広い現場で採用されています。
本記事では、エアブラスト冷凍の基本的な仕組みやメリット・デメリットを解説します。ぜひ導入時の参考にしてみてください。
エアブラスト冷凍とは?
エアブラスト冷凍とは、急速冷凍機の冷凍方法のひとつです。急速冷凍機は、短時間で物質を急速に冷却することで微生物の成長や化学変化を抑制し、長期間品質を維持できることから、食品加工や医薬品などの分野で多く活躍しています。
急速冷凍機には、エアブラスト式・ブライン式・液体窒素式・コンタクト式など多様な方式が存在します。それぞれ特徴は異なりますが、食品を短時間で凍結させることができます。
そのうち、エアブラスト冷凍は、その名の通り空気を使って製品を冷却します。空気を高圧化し、圧力を解放することで空気の温度を急速に下げる仕組みとなっています。従来の冷却方法と比べて冷却スピードが高く、鮮度や食感をできるだけ保ったまま流通させることができます。
エアブラスト冷凍の種類
エアブラスト冷凍には、用途や規模に応じた複数の方式があります。それぞれの特徴を理解することで、自社の生産体制に合った導入判断がしやすくなります。
パッチ式
パッチ式は、食品や医薬品をトレーやラックに並べて冷凍室の扉を閉じ、冷却した空気を送風することで急速に凍結する方式です。少量から中規模まで対応でき、操作も比較的簡単なことから、中小規模の食品工場や飲食店などで広く利用されています。
ただし、一度に冷却するため、ロットごとの入れ替え作業が必要であり連続生産には不向きです。入れ替えのために商品を待機させたり、動かしたりする際に商品の品質が劣化していないかどうか注意しなければなりません。小ロット多品種を扱う事業者には適していますが、大量処理を求める場合は別方式を検討する必要があります。
トンネルフリーザー
トンネルフリーザーは、コンベアに食品や医薬品を並べ、ベルトがトンネル状の冷却室を通過することで連続的に凍結させる方式です。大量処理に対応できるため、食品工場や加工業者での導入が進んでいます。
連続的に処理できるため効率が高く、大規模なライン生産に適しています。また、環境にやさしく、冷媒を使わないことから、エコな冷却技術として注目を集めています。
ただし、あまりにも強い風を当てると、商品の型崩れや乾燥を招く恐れがあるため、注意が必要です。冷却する食材によって、高風速低温の冷凍機もしくは低風速超低温のものかを選ぶといいでしょう。
エアブラスト冷凍以外の急速冷凍機の種類
エアブラスト冷凍以外にも、さまざまな急速冷凍方式があります。それぞれの特徴を理解して選ぶことが重要です。
ブライン冷凍
ブライン冷凍は、塩水やアルコールなどを低温に冷却し、その液体に食品を直接浸す方式です。液体が食品の表面全体に接触するため、熱伝導率が高く短時間で均一に冷却できます。
ただし、包装や衛生管理に注意が必要です。液体が直接触れるため、製品の種類によっては利用が制限される場合があります。
たとえば、包装材に小さな穴が開いていると、異物混入のリスクがあります。ブライン液が商品内に侵入すると、大規模な商品回収につながります。とくにパウチ加工をする場合には、接着時に隙間が生じたり、食材の凹凸が鋭いと穴が空いたりする可能性があるため、注意が必要です。
液体窒素冷凍
液体窒素冷凍は、マイナス196℃という極低温の液体窒素を利用して食品を瞬時に凍結させる方式です。細胞破壊をほとんど起こさず、風味・色・栄養素を保つことができます。
品質保持力が非常に高い一方で、設備コストやランニングコストが大きな課題です。高級食材や医療用サンプルなど、品質を最優先する分野で用いられています。
コンタクト冷凍
コンタクト冷凍は、冷却された金属板に食品を直接接触させ、熱伝導で凍結する方式です。接触面から効率的に熱を奪うため、比較的短時間で冷却が可能です。
ただし、食品の形状や配置に制約があるため、適用範囲が限られます。主に、魚のすり身やペーストされた食品に活用されています。
エアブラスト冷凍のメリット
エアブラスト冷凍は、導入のしやすさや汎用性など、多くのメリットがあります。ここでは、代表的なメリットを整理します。
従来方式より急速な冷凍が可能
エアブラスト冷凍は、従来方式に桑部手冷却速度が非常に速いため、食品の細胞破壊を最小限に抑えられます。これにより、解凍後も鮮度や風味を保持しやすくなります。そのため、鮮度を重視する生鮮食品の流通現場で活躍します。
省エネルギー性が高い
効率的に冷風を循環させる仕組みにより、無駄なエネルギー消費を抑えられます。長期的な運用コストを低減できるため、経済的にも有利です。
環境にやさしい
冷媒を使用しないため、環境負荷が小さいのも特徴的です。二酸化炭素の排出量削減にもつながるため、サステナブルな事業活動を目指す企業に適した方式といえます。
広い設置スペースが不要
エアブラスト冷凍は従来の冷凍機と比べてシンプルな構造であり、大規模なスペースを必要としないことが特徴です。最小限のスペースで設置でき、空いたスペースは別の空間として有効活用できます。
また、メーカーによっては、キャスター付きの移動式のタイプも選べます。小規模事業者や既存施設への導入もしやすく、幅広い現場に対応可能です。
エアブラスト冷凍のデメリット
このように、エアブラスト冷凍にはさまざまなメリットがある一方で、課題も存在します。導入前にはメリットだけでなく、デメリットも踏まえて判断することが大切です。
乾燥作用
エアブラスト冷凍は、強い冷風を使って冷却する方法なので、食品の表面が乾燥しやすいという欠点があります。商品の水分が蒸発すると、品質の劣化や風味の変化を引き起こす可能性があります。
とくに食品や医薬品など、乾燥による被害が大きい場合には、エアブラスト冷凍はおすすめできません。
冷却のムラ
食品の形状や配置によっては、冷風が均一に当たらず冷却ムラが生じる場合があります。とくに厚みのある食品では中心部の冷却に時間がかかり、品質差につながることがあります。
導入前には機械の取扱説明書をしっかりと確認し、棚の配置や冷風の流れを工夫することが大切です。食品を詰めすぎたり、段ボールに梱包されたままの状態でまとめて入れたりすることのないように、注意しましょう。
エアブラスト冷凍は、冷風を均一に商品に当てることで最大限の効果を発揮します。冷風がさえぎられていると、食品が緩慢冷凍になりやすいだけでなく、生産スピードも低下します。手間はかかりますが、風をさえぎらないように商品を一つ一つ丁寧に並べることで、品質を保ち、効率の良い生産を実現します。
なお、近年は多方面から包み込むように冷風を当てる冷凍機も登場しています。用途に合わせて、最適な機種を選ぶといいでしょう。
まとめ
食品加工や飲食業界において冷凍技術は、品質保持に欠かせない重要な手段です。とくに近年は、風味や食感、鮮度をできるだけ損なわずに保存できる「急速冷凍」が注目されています。
急速冷凍機には、大きく分けて4種類がありますが、そのなかでもエアブラスト冷凍は、従来の冷却方法と比べて急速に冷却できることから、多くの現場で導入されています。ただし、表面が乾燥してしまったり、冷却のムラが出やすかったりといったデメリットもあるため、ほかの冷却方式との比較検討が重要です。
自社の目的や製品特性に合わせて導入を検討することで、より安定した品質向上につながるでしょう。本記事が参考になれば幸いです。
- ジャンルを問わない急速冷凍機
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3Dフリーザー/株式会社コガサン
引用元:https://kogasun.com/3Dフリーザーは、世界初の特許技術による冷凍で食品の美味しさをキープしたまま保存できる点が食品業界で評価を得ています。
繊細な飾りつけや、従来では冷凍ができないと思われていた食品など、「冷凍ができれば叶うのに…」と販路拡大や大量生産を諦めていた食品事業者の方におすすめしたい急速冷凍機です。